温泉が湧き出た瞬間、肩を抱き合って喜び合ったあの日。
「勝負している」気概が生きている証。
家系に流れるのは、根っからの商売人気質だ。

■大幅なリニューアルオープンと共に、
始まった改革
大田原市内、中田原の蛇尾川の側にある、大田原温泉ホテル 龍城苑と太陽の湯。とりわけ太陽の湯においては、一昨年11月に大幅なリニューアルオープンを果たした。女子大浴場の全面改装により、新たにジェットバス・ロウリュウの楽しめるサウナ・岩露天風呂に加え、香り豊かな檜の露天風呂も新設。脱衣所も広くし、パウダールームも開設。より快適な空間へと生まれ変わった。また大浴場以外では、ゲルマニウム鉱石を含有した岩盤浴室(12床)を新設した。
「2〜3年前から構想を練っていた大改築で、一昨年11月にリニューアルを果たしました。お陰様で現在では、PR効果もあってか県外からのお客様にも多くご利用いただくまでになりました。」
とは、社長の大金さん。
「しかし、やっぱり、時代の流れは厳しいことに変わりないです。平成20年9月のリーマンショック以降、さほど影響はないかなと思いきや、どっと不景気の波が押し寄せる世の中になりました。お金を使わない、持たない風潮になっていますから、今が踏ん張り時です。」
「設備投資にかけた分、ハードはしっかりと確立しましたから、次はソフトの部分を強化していかないといけない。結果を導き出さなければならない時です。ハードにプラスされたソフトが稼働しているかどうかを見定めるのが、今後の課題になってきますね。」
■立ち込め始めた硫黄の匂い
勝負に勝った
祖父から父、そして三代目として代表取締役社長に就任した大金さん。
温泉のスタートは今から28年前。元々の家業は、大田原市内に藤屋会館という結婚式場を営んでいた。
「今思えば私が高校生の頃までは、結婚式がお座敷で行われていました。大名膳に座布団で新郎新婦は正座したまま。もちろんキャンドルサービスなどありませんでした。当時の新婦さんは大変だったと思いますね。」
「私が家業に携わる頃には宴会場が洋間になり、テーブルでの披露宴に変わっていました。それと同時期に大田原市に新たな結婚式場が誕生し、競合の時期を迎えていました。当館の敷地の手狭さ等、新規参入組に苦慮していたそんな時期に、父が経営のもう一本の柱として温泉掘削を決意したのが現在のこの施設の始まりでした。」
大田原城址公園前、蛇尾川が流れる近辺は、一面田んぼの風景だった。一大決心をした温泉掘削は、昭和57年10月から翌年58年の8月まで、10ヶ月間続いた。現在においては、温泉掘削は3ヶ月くらいで終了するが、当時は3倍手間のかかる作業だった。
「温泉掘削の途中で、硬い岩盤の地層や粘土質の地層にぶつかると、1日に30センチほどしか掘削が進まないことがたびたびでした。毎日が親子鷹の世界…。父も私も、とにかく出てくれ…という祈るような気持ちで必死でした。博打に近いですよね。正に社運をかけた、賭でした。」
温泉が湧き出てきた瞬間は、生涯忘れることが出来ない。あたりに温泉特有の硫黄の匂いが立ち込め、掘削泥の臭いと入り交じって温泉が湧き出てきた。
「心の中で最高のガッツポーズ。父と肩を抱き合って大喜びしました。本当に嬉しかったですね。」
■自らを律し、
熱い思いで明日を見る
大金さんが座右の銘にしている言葉がある。
〈良馬は鞭の影を
かえりみて走る〉
黒羽町にある雲厳寺(うんがんじ)の植木老師の言葉だ。
「トップとしてもスタッフとしても、自ら言われる前に行動する。鞭を打たれる前に自ら察知
して動ける人に…という意味です。」
「お陰様でスタッフの定着率も良く、長く働いてくれるスタッフは正に宝だと思っています。トップはもちろんそうですが、お客様に満足のサービスをお届けするには、その気持ちをスタッフにまでも浸透させなければいけない。そして何よりも、言われてからやるではなくて、自ら言われる前に行動するような人を目指したいですね。」
根っからの商売人の家系に育った大金さんは、商人であることに誇りを持っている。
「出る保証はなかった源泉を掘り当てた時も、すごい怖い賭だったけれど、ああやっぱり、自分には商人としての血が流れているなと思いました。もっと安全で確実性の高い仕事はあるかもしれないけど、商売はやっぱり面白いと思います。自分が生涯において、勝負しているっていう気概が、私が一番面白いと感じる瞬間です。」
龍城苑・太陽の湯のHPはこちらですhttp://www.ohtawara-onsen.com/
| | 2010.03.03 |
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