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Vol.91 株式会社木の花ホーム 早乙女 正さん

草野球から大リーグを目指す企業体質は
根っからの大工棟梁の気風を受け継いだ
「ただ、まっすぐにつくる」ことだけを貫いて…
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■大工棟梁の家系。木材に囲まれ、育った少年時代

栃木県上都賀郡西方町。のどかな風景が広がる中に、(株)木の花ホームはある。シンプルで高品格な建物は完成して間もない新社屋。中にお邪魔すると、木の薫りに出迎えられた。
 代表取締役の早乙女さんは、大工棟梁の家系に生まれた三代目。時代は昭和40年代の建築ブーム。3年先まで、カレンダーは仕事の予約でびっしり埋まっていた。
 「納得のできる家を造りたい」そんな職人気質で木の花ホームを立ち上げ、現在に至る。
 「良い家は良い大工で決まる」という方針には、一切妥協は許さない。元大工の厳しい眼にかなった良質の職人をスタッフに迎え、流通や宣伝、建材などの省けるコストはとことんまでカットするというビジネスモデルを実践。「安くて、いい家」の実現に成功した。その姿勢は瞬く間に評判となった。人口が7000人に満たない西方町での高い実績を実現。設立当初から着工数は右肩上がり。西方町で揺るぎない成功を収められたことは、地域密着型の証でもあり、木の花ホームにとっての大きな誇り、財産となった。そして県南から栃木全域へと施工実績を増やし、年間着工件数は県内でもトップクラスに位置する。
「物心ついたころから、玄関や至る所、家の中は木材だらけの環境で育ちました。もう自然と、家を造る仕事以外はない人生でしたね。職人も5〜6人、常に出入りしているような家で、幼い頃は遊びに行くよりも、現場に出向いていた記憶の方が鮮明に残っています。厳しい父親だったので、友達と遊ぶよりも、機械で穴を掘れなど、色々言われていました。」
 大学を卒業後、父親から「他人の飯を食え」との指示があり、別の棟梁の元で3年間厳しい修行に耐えた。
「社会に出る時、最初に出会う会社って重要だと思うんです。真っ白な土壌に直で影響を受けるわけですから、自分の仕事スタイルがそこである程度決まると思うんですよ。私は生まれた時は父、社会人一年生の時はそのおっかない棟梁だったので、今ではその経験が有り難いなと実感しています。だからこそ、やっぱり人間、素直さが一番大事だと思いますね。」
 仕事に厳しい棟梁に教えられたことは、大工仕事のシビアな世界。「自分の仕事は一生残る、上手くやっても下手にやっても残る」という一言が刻まれた。


■何百棟のうちの一棟ではない
それは正に一生涯の手仕事


「会社設立は17年前のこと。
「25、26歳の頃っていうのは説得力のない時期で、仕事がなかった。ツーバイフォーやプレハブ建築も試してみたんですが、やはり造りがアバウトで、住み始めてから欠点が目に付くところが気になった。その点、在来木造住宅は欠点が少ない。在来の仕事が一番だと実感しました。」
「自分が親方の指揮を執っていた時は、抱える大工7人分の仕事を探すのが大変でした。仕事量を倍取ってこないと、3ヶ月で工期が終わってしまう…そんなプレッシャーとの戦いでしたね。」
大工の棟梁として先頭を切っていた早乙女さんには、忘れられない一つのエピソードがある。足利のメーカーの仕事で3棟並んだ物件があった。別の会社でそれぞれ受け持っていた時、早乙女さんが担当する家の家主である若夫婦が現場にやってきた。早乙女さんの手仕事を見ながら、二人は涙を流して立っていた。
「3棟並んだ別の会社の大工さんが、『隣の大工は、丁寧な仕事をしてるよ』と言ってくれたらしく、それが嬉しくてお二人は泣いておられました。私にとっては何百棟のうちの一つの仕事だけれど、この若夫婦にとっては一生のうちの一棟なんです。家を造るということは、一生涯の仕事をしているということですね。」


■テーマは「ただ、まっすぐにつくる」

根っからの職人気質で、理想を曲げることなく貫いてきた早乙女社長。「より安くて、より良い家をより多くの方に提供したい」その姿勢は、仕事に対しても非常にシビアだ。
「建造物に対する高度基準、また営業に対してはシビアに時間管理もしています。ただ、時代に対しての先読みが間違ってはいないと思っています。最近ようやく、余分な脂肪が出て、筋肉体質の企業に昇華出来たかな、と思っているんですよ。」
元々会社経験もなく、大工の技術しかなかったが、2000年以降、100棟を超える実績を持つ会社は、全国でもそうはないと自負している。社長は自社のことを、「草野球から上がってきた会社」と形容する。
「つまりは、大リーグに上がろうとする意識のある社員しか残っていないと思っているんです。常に自分を磨いていかないと…」
 天才はいない、天才とは、努力することに長けている人のこと。そして、立ちはだかる壁というのは、全て無駄なものはないというのが持論だ。
「どんな困難も、神様が用意してくれるものだと私は思っています。それを素直に受け入れられる人は、必ずいい方向に進んでいきます。逃げていたらいつまでたっても同じ壁が来るし、最後にはその壁すらこなくなる。人生にとって『必然の壁』ですね。だからどんな困難も決して、環境のせいにしてはいけない。全ては自分の責任。覚悟を決めた人に、必ず運は巡ってくるものです。」
 大工としての厳しい世界の中で、早乙女さんの進むべき道は決まっていた。木の花ホームにはルールがある。それは企業のメインテーマともなっている、
「ただ、まっすぐにつくる」
という答えだ。決して妥協しない、めげない、信念を曲げない。ビジネスの世界で成功する人は、必ず自分の信念を貫き、自分ルールを頑なに守っている。どんなに遠い地域の現場でも、未だに仕事のスタートは朝8時から。大工時代から染みついたそんな自分ルールを、早乙女さんは未だに大切にしている。
 頂いた名刺の裏には、セピア色の二枚の写真が印刷されている。一つは、昔気質の大工棟梁だった父親と共に、施工中の家の前で職人達と並んでいる写真。もう一つは、会社を立ち上げた頃の大工7名の写真。その中央には「ただ、まっすぐにつくる」という一言が添えられている。

| | 2009.01.31 |

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